2015年10月25日

境界の彼方(未来編その5:長月駅の方位盤の謎解き)

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境界の彼方の劇場版(未来編)が東京都内で最後に上映されてから3ヶ月後、未来編のBDの発売記念イベントとしての上映会が新宿ピカデリーで催されることになり、筆者も参加して来ました。BDの全国発売日の10月7日は神原秋人の誕生日ということですが、その4日前の土曜日(10月3日)に会場ではBDが先行販売され、特典としてポスターが添付されていたのもあって、予約をネットでしていたにも拘らず、会場でも購入してしまいました。
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映画館での上映を久しぶりに観ると、懐かしさとともに、それぞれのシーンをゆったりと観ることができたのは、時間が経って映画の内容が咀嚼できていたからだと感じました。
上映が終わったあと、舞台挨拶があり、種田梨沙さんがもっとこれからも舞台挨拶の回数を増やせたらいいなと仰っていましたが、TV版のBD-BOXの発売に際して、TVシリーズ一挙上映会があればいいなと思います。

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映画が終わったあとは、フォロワーさん達と恒例の世田谷邪宗門さんに訪れて、リアル新堂写真館での映画の余韻に浸りながら美味しい珈琲を頂きました。

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さて、帰宅して早速入手したBDを再生して、ずっと気になっていた長月駅(橿原神宮前駅)の改札を出たところにある方位盤が大写しになるシーンの確認です。(この件については、こちらをもう一度ご覧ください)

BDプレーヤーにディスクをセットし、はやる気持ちを抑えつつ、再生ボタンを押す。そして、このシーンが家のモニターに映されると、『修正されていない... 』。
石立太一監督、あるいは京アニスタッフは自分のブログ見てくれていなかったのかと。
実はこの日、数ヶ月ぶりに、映画館でこの方位盤のシーンが登場したときに、以前のブログ記事作成時点では気が付いていなかったこのシーンの意味を筆者は理解していたのでした。
それは、未来と桜が学校から下校する途中に久米寺(劇中では寺の看板の文字が読めない)の辺りで敵に襲われ、秋人や博臣が助けてくれ、そして先に未来と桜が帰るというシーンと、その後、秋人、博臣、美月の3人が長月駅の改札前で今後の未来への対応について話をする場面への「シーンチェンジ(場所の移動)」を視聴者に意識させるためのカットがこの方位盤のアップなのだと。

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未来編の台本のレプリカ(縮小サイズですが全編収録で、しかも石立監督の書き入れがあるという貴重な物。BDの初回特典として付属しています)

このように理解すると、この方位盤のことが色々と判ってきます。
まず、なぜ逆さまに映されているのかということですが、これは改札に向かっている方向となっており、これから電車に乗って家路に着くということを示しています。

さて、そういう解釈を前提にすると、この方位盤の「南」の文字が裏文字になっていることは特に意味がなく、単なる作画ミスではないかと考えられます。この日、このシーンをBDで見直しているときに、映画館では気が付かなかった「西」の文字も裏文字になっていることにも気が付きました。さらに、「東」の文字も怪しい感じです。角ゴシック系の文字を色々あたってみましたが、東の文字の左右の「はらい」の長さ、「はらい」の末端の部分の処理は左右で微妙に違います。この東の文字も裏文字の疑いが否定できない感じがします。

そうすると、これらの3つの文字がなぜ裏文字になっており、「北」の文字だけが正しいのかということになりますが、その訳をこれから述べたいと思います。あくまで、筆者の想像ですので、考察が間違っているかもしれませんがそこはご容赦頂ければと思います。

では、最初に、この方位盤の位置関係が判る画像をご覧下さい。
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この画像は、10月17日に現地を訪れていたごるごさんに撮影して頂いた2枚の画像を合成して作成しています。(ごるごさんありがとうございます)

この方位盤を見下ろしている方向の延長線上には橿原神宮前駅の駅舎内の柱と時刻表の掲示板があります。
そして、劇中のこのシーン(方位盤、およびその周辺)には、これらのものが映り込んでいます。
しかし、筆者が5月に実際に橿原神宮前駅に訪れてこの方位盤の現物を初めて見たとき、この駅舎内の床(タイル)は鏡面というほどではなく、それほどはっきりとは映り込まないということがわかりました。
また、劇中のこの方位盤に映り込んでいる画像では柱の側面は影(暗い部分)となっていますが、この実際の撮影画像では、そこが影になっていない(黄色の丸囲み)ので、これは夜、屋外からの太陽光がない時間には、時刻表の掲示板の内部照明の光がこの柱の側面を照らし影がなくなるのだということもわかりました。
ごるごさんの画像の撮影時刻は午後5時20分頃でこの日の日の入りの時刻とほぼ同じで、既に辺りは暗くなっています。
このシーンのすぐあとには、駅の改札のすぐ近くにある時計が床面に映り込んでいる画があり、このシーンの時刻(午後4時8分)が判るようになっています。

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実際の時計(目覚まし)で確かめてみました。

この劇中のシーンは4月で入学式以降の遠くない日だと思われます。仮に4月10日とすると、橿原市に近い奈良市での日の入りの時刻は午後6時25分となります。したがって、この午後4時を過ぎたばかりの時刻ではまだまだ明るく、この柱の影が存在しているかどうかは微妙です。
なぜ、時計を4時8分にしたかという理由ですが、久米寺の辺りから橿原神宮駅までは徒歩で10分程度であり、前のシーンでの下校時間の陽の傾き加減、夕景らしい赤みのある画面から考えてこの時間に設定したのだと思います。しかしながら、この季節ではまだまだ陽が暮れてはおらず、このような暗い駅の画像にはやはり時間的に無理があります。おそらく、ロケハンが冬(12月など)に行われ、しかも曇りの日に撮影された画像のために4時頃でもそこそこ暗かったのではないかと想像されます。(冬至の前後の奈良市の日の入りの時刻は16時46分)
しかし、この劇中の駅舎の中の暗さを考えると、この柱の影はできないことになり、矛盾があります。

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特典の台本でこのシーンを見てみると、「長月駅(夜) 駅のタイル」とあります。

やはり、午後4時で「夜」というのは無理があると思います。
最初は、筆者も午後7時50分だと勘違いしていました。しかし、そうすると、久米寺からわずか10分で駅まで来れるのに、そのあいだどうしてたのかという疑問が浮かびます。途中には新堂写真館があるし、そこで珈琲飲んでたにしても午後6時で閉店(*1)だし、それから、どうするのかと。橿原神宮駅前のサンドさんでさらに時間を潰すとか。
(*1: TVシリーズでもそのシーンが出てきます。現実の世田谷邪宗門でも午後6時が閉店時間です)

さて、あまりはっきりとは周りの風景が映り込まないタイルなのですが、この方位盤のシーンで映り込んでいる駅舎内の柱と時刻表の掲示板の画像をもう少しよく見てみます。この柱は、途中からは斜めになって天井へ伸びていますが、その境目より下の部分は濃いグレーになっており、その上の斜めの白い部分との境目がはっきり判ります。問題なのは、この境目の角度が立っていることです。(水平に近いのではなく、45度以上立っているのです。この角度で映り込むには方位盤と柱の距離が有りすぎると思うのです。)
そして、もうひとつ、この方位盤からこの柱の位置(方向)が微妙に合っていないことがわかります。柱から真っすぐ下ろした青い補助線は「南」の文字の左側に来ますが、劇中の画像に映り込んでいる柱は、「南」の文字の右側の辺りに見えます(緑の丸囲み)。

これら2点のことから、この方位盤の近くに映り込んでいる柱や時刻表は実際にタイルに映っているものではないと想像されます。つまり、この時刻表や柱は、別に撮影したものであり、この画像を方位盤のシーンに合成したのだと思われます。(もちろん、アニメなので、実際の画像を使う(そのまま合成する)のではなく、それらを基に画像を製作するのですが)

つぎに、この方位盤の形をよく見てみます。この方位盤の周囲のタイルの大きさ(30cmx30cm)をそれぞれ見較べるとそれほど奥行き方向でのタイルのサイズの差がない(遠近感が少ない)ことが判ります。つまり、方位盤を斜めから見るのではなく、方位盤の縁の近くの上方から見下ろしていたという感じです。その位置を先ほどの柱の境目の角度を基に考えると、もっと柱の近くに方位盤がないとこの柱の境目はこのような角度には映りません。(想定する方位盤の位置は画像中のピンク色の丸の辺り、側面図も同じ)
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元々、映り込みがほとんど期待できないタイルなので、映り込み画像を実写で撮影したのではなく、素材、つまり柱や時刻表を直接撮影して、それを基に映り込み画像を作成し、方位盤画像に合成したのだと思われます。
つまり、映り込みをさせるための画像(元素材:柱や時刻表)は鏡像ではなく、正像ということです。

さて、ここからが、本題です。
どのような作業過程を経て、方位盤のカットを作成したのかを順番に説明して行きます。
以下、Adobe Photoshopでの操作手順の説明になります。

まず、方位盤の周辺のタイルを真上から見たように作成します。1枚1枚が同じ大きさということになります。
この上に方位の矢印(十字形)を載せます。
そして、それぞれの先端に東西南北の文字を1文字ずつ配置します。これらの文字と矢印をグループ化しておきます。
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つぎに、タイル部分のみを時計回りに回転させます。
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そして、この矢印と文字を矢印の中心を軸に適せん時計回りに回転させます。

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そして、柱や時刻表の映り込み画像を予め用意しておいたものをそのまま、別のレイヤーで重ね合わせます。
適度に透明度を下げて映り込んでいるように見えるように調整します。(サンプル画像では柱のみ緑色で表しています)

ここで、上下に反転をします。
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これで、方位盤と映り込んでいる柱の方向が劇中シーンと同じになりました。

さて、この画像を見ると、北の文字が鏡文字になっていることに、すぐ気が付きます。そこで、この文字のみを反転させます。
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さらに、注意深い人は、東西南北の並びが、東ー>南ー>西ー>北(時計回り)ではなく、(反時計回り)になっていることに気が付きます。そこで、西と東の文字の位置を入れ替えます。
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この作業をするに当たって、筆者は、東の文字を右から左に持って来るときに、元々あった西の文字に上に配置しないように、とりあえず、外側に置きました。そして、東の文字があった空いた場所に西の文字を持ってきます。このため、若干、東の文字や西の文字が矢印の先端から離れています。(劇中の東西の文字は同様になぜか微妙に矢印の先端から離れて配置されています)
これらの操作は文字が逆さまになった状態で行っているということがポイントです。

最後に、この全体の画像を垂直方向に圧縮し、さらに、左右の垂直線をそれぞれ内側に気持ち傾ける(自由変形する)ことで遠近感を出します。
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以上が、この方位盤のシーンの作成手順だと思います。

ここまで読んでいて、読者の方は当然、いくつかの問題に気づいていると思います。
上下反転すると、文字が鏡像(裏文字)になってしまうこと。
作業者も当然、それに気が付いて、北の文字を反転することは行っています。しかし、その他の3文字には気が付かなかった、それは、東の文字は左右対称であったこと、そして、西の文字はゴシック体では微妙に違うのですが、比較対象の橿原神宮前駅の実物は左右反転の差がないこと、そして、南の文字のハネの位置が左右反転だと変わるのですが、「逆さまのままで作業をしたので、チェックが漏れてしまった」というのが真相ではないでしょうか。

筆者は、3回目の観賞時にこの南の文字の間違いに気が付き、橿原神宮前駅まで行って、それを自分の目で確かめてきました。ネットでも調べてみたのですが、この間違いに気が付いていた方を他には見つけることができませんでした。筆者はこの間違いをブログに書いて、京アニの作画スタッフの方がこれに気が付いて、修正してくれることを期待していたのですが、残念ながら気が付いてもらえなかったようです。

文字を逆さまに見ると、正しいかどうかを見誤ることが多いと思います。今回の映画版製作においては日程が厳しかったことは、BDのコメンタリーを聴くとよくわかります。業界としてアニメーション製作の日程の厳しい中、京アニのリアリティのクオリティの高さは、群を抜いており、そういう中で、この方位盤のシーンを色々考えてみると、感慨深いものがあります。

聖地巡礼はその作画リアリティの高さと満足感とが、ある程度は比例していると思います。
しかしながら、作画ミスは、作品への没入感を阻害するものなので、意味は異なります。
今回、ラストシーンの踏切での未来ちゃんのタイツ着用、非着用の問題に関してはチェックが入って修正されたようですが、この方位盤文字問題は、残念ながらチェックが入りませんでした。
京アニも含めて、作画ミスなどを指摘するデータベース窓口などをアニメ製作会社は設けてもよいのではないかとも思います。
こだわりの京アニ作品なので、この方位盤について今回はこだわってみました。
まあ、間違い探しも楽しいので、目くじら立てることでもないのですけどね(^^)

新宿、世田谷:2015年10月3日(筆者撮影)
橿原:2015年10月17日(ごるごさん撮影)
posted by グルミット at 10:28| アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする